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二つ三つのイーハトーブ物語『第二部 木偶ウーボの振り子』

野戦19の秋

イーハトーブ(理想郷)は、今を生きる私らが未来に投影する幸福社会のことではない。逃れることのできない現実に対する切迫した、全面的な批判意識によって想像・創造される、この現在のもう一つの〈場〉のことである。
だから、イーハトーブを物語るとは、私らの現実的な危機意識の中にひらめくように想起される過ぎ去った出来事と関わっている。その出来事は多数であり、時制も複数である。しかもそれはすでに燃え尽きた灰のような出来事たちである。その具体的事実を知るには限りがあり、いわんや再現することは不可能だろう。それにもかかわらず、いや、それ故にこそ、忸怩たる過去の出来事たちは、忸怩たる私らの生活現実の中に、解放・救済の期待をもって、一瞬のひらめきのように訪れる。私らの応答する力能を問うかのように。このような過去の出来事たちの襲来によって私らの記憶もまた動き始める。これが〈クオキイラミ〉、逆さまに動く未来への記憶だ。その活動空間として私らのテント場は用意される。
昨年秋のテント場で、私らのイーハトーブ物語は「堂々たるデク」というタイトルで上演された。今秋の「木偶ウーボの振り子」は当然、昨秋とつながりを持ってはいるが、連続というわけではない。真新しい過去の襲来によって、私らの記憶も動いているからだ。
「時間による空間の絶滅」という言葉がある。これは資本社会の経済速度が要求するベクトルである。生産、流通、消費のすべてにおいて、社会空間は選別的に圧縮されており、逆に非選別空間は放置されている。私らは通常、このような社会空間の中に二様の時間を抱えて生活しているだろう。それは喩えれば、文字盤の二つある振り子時計の、その振り子箱の中の暮らしである。吊るされている錘りが私らの身体である。振り子の周期は経済速度によって厳しく調整されていて文字盤の針を諧調に動かしている。だが、もう一つの文字盤には針がない。私らの振り子運動はその文字盤ではなにも表現されていない。その文字盤はおそらく電脳空間に設置されていて、錘りである私ら以外の表現に満ちている。その空間に、あの忸怩たる過去の出来事は到来しようがないと思われる。なぜならその出来事たちは私ら同様に身体を持っているからだ。
では、私らに期待する過去はどこに到来するのか。おそらく、振り子の錘りたる私らにぶら下がる錘りとしてではないか。二重振り子である。二つ目の振り子の揺れは予測できない。正確に右往左往する私らとは真逆のダイナミズムをはらんでいる。
「木偶ウーボ」のウーボとはエスペラント語で「街」の意味である。この想像された「ウーボ」では市民社会の財貨(身体を含めた個人資産)による秩序は絶対的なものではない。なぜなら、なけなしの身体すら財貨として登録できない木偶たちの街だからだ。この「木偶ウーボ」で、過去のダイナミズムと私らとの交渉、交通関係が、新たな空間を作ることが期待されるのだ。 ——桜井大造

日時
2019年10月19日(土)18:00開演、20日(日)18:00開演、21日(月)19:00開演、22日(火・休)18:00開演(開場は開演の30分前)

会場
矢川上公園(国立市富士見台)
JR南武線矢川駅より徒歩4分/JR中央線国立駅南口よりバス10分
(1番・4番乗り場 矢川駅、国立操車場、国立和泉団地行き『矢川駅』下車 徒歩4分)

料金
前売・予約 3000円
当日 3500円
障碍者・大学生 2000円
中高生 1500円
小学生以下無料

予約・問い合わせ 電話 090-8048-4548  E-mail  ticket@yasennotsuki.org
チケット取り扱い 模索舎 03-3352-3557


【演員】
ばらちづこ
疫蠅以蔵
丸川=盧 哲史
森 美音子
崔 真碩
韓氷
楊 禮榕
リュウセイオー龍
小童
楊 璨鴻
押切マヲ
胡 議航
劉 珈妗
桜井大造

作・演出:桜井大造
音楽:野戦の月楽団 原田依幸
舞台監督:おおやまさくに
照明:2PAC
音響:羅 皓名
舞台:渡辺 薫 風間竜次
美術:Doyoung 中山幸雄 李彦
衣装:野戦之月衣装部
宣伝美術:上岡誠二
翻訳:韓氷 丸川哲史
記録:植田二郎 Jong Min
通信:吶喊編集部 水野慶子
制作:野戦之月制作部 押切珠喜 今泉隆子

共同制作:台湾海筆子 北京流火
協力:済州島カンジョン「クロムビの月」 明治大学大学院丸川ゼミ 「山谷」制作上映委員会
山谷労働者福祉会館活動委員会 独火星 広島アビエルト プーロ舎
後見:伊井嗣晴 武内理恵 山口めぐみ みりん 根岸良一 新井輝久

チラシダウンロード(PDF / 5.11MB)