日時:5月29日(月)~6月3日(土)
(写真展示は各日12:30~13:30、講座は各日19:00~21:00)
会場:明治大学和泉キャンパス(京王線明大前駅徒歩5分)、メディア棟横特設テント
主催:明治大学大学院教養デザイン研究科
協力:テント劇団「野戦之月海筆子」
本企画は…
台湾で発明された葬式用テントを転用した約一週間の教育実験の広場です。
固定した建物では得られないもの——風、日差し、雨さえ私たちの感覚と対話するでしょう。
「災い、転じて福と為す」
災害時のように、テントは誰によっても建つものです。
特別な技術も体力も、資産さへも不要。
その代りに…
みなさまの参加、協力、創意を求めています。
5月29日(月)音楽トーク「台湾のコンポステラ」+ダンス「『続無法地帯』地図から抜け出した地球儀」
講師:平井玄
構想・踊り手:リユウセイオー龍
講師:平井玄
音楽評論家。東京都立新宿高校時代に坂本龍一等と全共闘運動に関わる。1980年代には、雑誌『同時代音楽』の編集。著書に『彗星的思考』など。
篠田昌巳があっという間に世を去って25年。彼のサックスは今聴いても若すぎず、そして年老いない。彼のバンド「コンポステラ」 (ジャズ、ファンク、チンドンを跨いだ伝説バンド)はこの世界のどこか、その裏道をくねくねと巡礼の旅を続けている。初めて台北を訪れて、延々と続く夜市 の明かり、そこいら中にある路地や小店の連なり、怪しい霊廟の賑わいをそぞろ歩くと、コンポステラはこういう轍を残したのかと思う。台湾は瑞々しく若い。 その混沌の中で語りたい。
構想・踊り手:リュウセイオー龍
1995年野戦の月『バンブーアーク 阿Qの陣』で舞台デヴュー。以降、現在に至るまで野戦之月海筆子、独火星の全公演に出演。2015年の「風に吹かれてテントは世界を包む2015」「無法地帯」を初演。今回はその続編となる。
1枚の地図からさまよう道の夜空を見上げよう。ほら、星空が、瞬いている、あれが、コンポステラの星だろう。さぁ、星空の下で1つの星のカケラになるのさ。
5月30日(火)ドキュメンタリー上映<記憶の中のシベリア>+監督トーク
講師:久保田桂子
司会:佐藤賢
➊『祖父の日記帳と私のビデオノート』(2013年)❷『海へ~朴さんの手紙』(2016年) http://siberia-memory.net/ 計り知れない戦争の記憶—祖父たちの世代が体験したその記憶を、何気ない日々の生活と四季の移ろいが映し出す風景からささやかに描き出した、珠玉のドキュ メンタリー。久保田桂子は美術大学で劇映画の製作を学んだ後、ドキュメンタリーの制作をスタート。日常を繊細に捉える視点とエッセイを読んでいるような独 特の描写が評価され、座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル・コンペティション部門で大賞受賞。司会:佐藤賢(明海大学)
5月31日(水)「テントは細胞だ! アナロジーで考える場の重要性」
講師:浅賀宏(教養デザイン研究科 ヒトを中心に考える生命科学)
ボーイスカウト活動で馴染んだ経験があるせいか、今でもテントに入るとワクワクする。なぜだろう。テントは膜構造建築物の一種で、一 枚の膜が重要な働きをしている。似た例は自然界にも少なくない。私たちの体に数十兆個もある細胞もそうだ。1㎜の十万分の1という想像を絶する薄さの細胞 膜に小孔をあけるだけで、生命を維持できなくなる性質がある。なぜだろう。この機会にアナロジーで人間と生命の場について考えたい。
6月1日(木)「中平卓馬と沖縄」
講師:倉石信乃 明治大学理工学部総合文化教育(近現代美術史・写真史)
中平卓馬(1943-2015)は1960年代後半から先鋭的な写真家・批評家として活動し始める。1973年、ある冤罪事件の裁判 支援のために初めて沖縄を訪れる。「復帰」直後の沖縄が曝されている悲惨な状況を閑却し、観光と開発を謳歌する「本土」のあり方を、中平は痛烈に批判す る。他方、その鮮やかな自然風土や文化に深く魅了され、事物の働きかけを画然と受けとめる、新たなカラー写真の叙述形式を獲得していく。ここでは、沖縄と いう抵抗体への支持を貫いて身体化した、中平卓馬のプラクティスを振り返りたい。
6月2日(金)「記録する運動—阿波根昌鴻の伊江島土地闘争記録写真集『人間の住んでいる島』を読む」
講師:新城郁夫
宮古島生まれ、琉球大学教授。沖縄/日本文学・思想、著書に『沖縄を聞く』(みすず書房)、『まなざしに触れる』(鷹野隆大との共著、水声社)、『沖縄の傷という回路』(岩波書店)
1950年半ば、沖縄北部の先にある伊江島で生起した米軍基地強制接収に抵抗する、阿波根昌鴻を軸とする伊江島の人々による土地闘争 の可能性を、その写真記録を読むことを通して考える。その際「境界の可視化」「座ることと行進すること」「文字を撮る」「見る人たちを見ること」という4 つの視点を設ける。奪われつつある「今」を記録する抵抗が、生きていることの未来化となり、生の条件を形づくっていくことを、写真のなかに感受していく。
6月3日(土)前説「魯迅のアレゴリー世界」+試演 「幻燈三千世界—阿Q氏の帰還 」
講師:丸川哲史(教養デザイン研究科)
監修・演出:桜井大造(劇団 野戦之月海筆子)
野戦之月海筆子(ヤセンノツキハイビィーツ)
1994年の旗揚げ以来、テント劇を持続してきた集団。東京を拠点に日本全国各地、海外では台湾や北京、
韓国でもテント公演を行っている。代表は桜井大造。
魯迅が仙台の留学先の教室で観たという「幻燈」、その中で公開処刑にされる<同胞>——それが原光景。
そこから魯迅は 「狂人」や「阿Q」が見る「夢」を発明した。
今回の試演会は四月に北京のテント劇団「流火」による中国人民大学試演と連動する。…私たちの見ている現在の 日本(アジア)の「現実」は果たして「悪夢」のように
進行しているようだ。
この「現実」をもう一度、魯迅が発明したプリズムを使って凝視する。つまり、 私たちはむしろ「夢」の次元から出発し「現実」を作り直してみるべきなのだ。